皆様ゴールデンウイークをいかがお過ごしでしたでしょうか?なかなかお休みを取れないという方もいらっしゃると思います。私自身も昨年自分の会計事務所をオープンしてから、なかなか休みが取れない状況が続いていましたが、先週末久々に岩手、宮城の温泉を巡りリラックスしてきました。岩手では湯田温泉(地元の方以外はあまり知らないと思いますが)に行き、盛岡では久々にわんこそばに挑戦しました。数年前に挑戦した際には百杯以上食べましたが、その後しばらく動けない様な状況になりましたので、今回は無理することはせず88杯で終わりにしました。
さて、前回は借上社宅に関する税金について、日本、フィリピン、シンガポールを例に、各国における税制が大きく異なるものの、従業員の給与に上乗せして住宅手当を支給する場合に比べ、税金が安く上がる場合が多いということを述べました。一方前々回には、公式領収書や源泉徴収制度によりオーナー側が所得金額を補足されることを回避するために、会社が借上社宅を契約することが難しいケースが多々あるということもご紹介いたしました。
そこで今回は、この両方の問題を解決するために、各企業がどのように対処しているかということをご紹介したいと思います。
パターン2:ばれたらしょうがない派
ここ数年前までアジア地域に進出する日系企業の多くは、より安い生産コストを求めて進出するケースが中心でした。各国では外資系企業の誘致を図るために、様々な優遇措置を提供し企業誘致を図っておりました。そのため、設立後数年間において法人税は免除といった、優遇措置を持つ国などが多々あります。
この様な国に進出し優遇措置を得た企業では、利益が出ても法人税はかかりません。そのため支出した金額が税務上費用として認められないとしても、法人税については無税ですから問題ありません。従って企業が行う取引においても、公式領収書ではなく、非公式な領収書の受領でもOKとするケースがあります。
一方、賃借料の支払いに際して源泉徴収を行なわなければ、税務調査で源泉徴収漏れの指摘を受けるリスクがあります。
そのため、会計上使用する費用科目は、“雑費”などとして“賃借料”では処理せず、更に受取る非公式領収書の摘要も、賃貸料とは分からない様に発行してもらいます。その場合、税務調査により源泉徴収漏れが発覚するリスクは常に追うことになりますし、発覚した場合には、企業側は源泉徴収漏れ、オーナー側は所得の隠ぺいが発覚するため、双方にとり大きな痛手を伴います。したがってこの方法を取るような日系企業では少数派であると思います。
パターン3:出向元依存型
出向者用借上社宅の賃貸契約を、出向元に行ってもらうパターンです。日本の税務上海外の賃貸物件の賃借料の支払いに関し、現地の公式領収書がなければ費用計上出来ないといったことはありません。また海外居住のオーナーへの支払いに対して、オーナーが居住する国の源泉徴収義務を負わされることもありません。そのため賃借契約を出向元の日本企業で行うパターンは多くあります。
この際、注意が必要なのは、出向先で働く駐在員の家賃負担を日本側の出向元が行うことについては、出向先企業に対する寄付金であるとの指摘をうけるリスクが相当あります。この際、出向者の業務が、“出向元企業に納品される製品の品質管理の業務を、出向先企業側で行う”といった、出向元企業の業務の一環である場合には、出向元企業側にて費用を負担する理由がありますので、その様な場合にはきちんと説明を行えば、寄付金の対象とはされません。
一方、出向者の業務が、出向先のための業務である場合には、寄付金と見做されることを回避するためには、出向先企業からは家賃見合いの対価を、“何らかの形”で徴収する必要があります。ここで“何らかの形”と記載したのは、以下の様な点を注意する必要があるからです。
出向先企業では、出向元企業への支払いを“賃借料”として処理すると、源泉徴収の問題が再燃します。フィリピンの税務調査でも、賃借料という科目で処理する=源泉徴収対象 といった前提で税務調査が行われます。源泉徴収を行っていませんので、その根拠を提示する必要がありますが、この過程において、出向元企業に対する賃借料の支払いが、源泉徴収を回避するための迂回スキームということが判明すれば、源泉徴収を逃れるための悪質な処理として指摘されること、ほぼ間違いありません。
そのため、出向先企業では、“賃借料”以外の様々な費用項目で処理をすることは、パターン2と変わりありません。ただ、今回は領収書を発行するのは出向元の日本企業であり、発行する側の企業としては、本来は賃借料の立替金としての請求を、どのような名目で請求するのか、かなり苦労されている様です。自らの会社の件ではなく、海外の子会社等の会計処理に頭を悩ませなければいけないわけですから、なかなか大変ですね。ただ各社の対応について一様ではありませんので、皆様の企業がこのような状況に直面した場合には、是非ご相談下さい。