~物価安い国は減額だって?~
日本人の従業員を海外諸国に赴任させるにあたり、給与はどのように決めればよいか、経験がない会社では頭を悩ませると思います。
私の知り合いのある社長さんは、日本と現地の物価水準を比較し、その水準が低ければ減額するといった方もいますが、このようなケースは珍しいと思います。
私自身最初に海外赴任した際には、日本にいた時に比較して手取り額は結構増えました。最も当初提示された金額で十分と思っていたのですが、現地に到着して驚いた面もありました。
例えば家賃です。私が最初に赴任した当初は、1ドル=150円程度であったと思いますが、市内中心部である程度の住居に住もうとした場合月額40万円程していました。そこで仕方なく郊外のアパートを何とか予算内で借りましたが、渋滞が物凄く、ちょっと郊外でも1時間~2時間程度の通勤時間は当たり前といった状況でした。そのため赴任後ある程度経過し、周りの駐在員の方と仲良くなったところで、それぞれの方にどの程度の家賃で、どの程度の部屋を借りているのか情報を貰い、それを纏めて各人の署名を貰ったうえで、日本への一時帰国時にトップの席まで持参し、住居手当を上げてもらった記憶があります。
イメージで、〝この国の物価は日本に比較すると20%位やすいな。だから20%減額しよう“ などとされたら、駐在する側はたまったものではありません。
以前一時期出向で勤務した外務省では、勤務地の過酷さの程度で等級があり、その等級が高ければ勤務手当も高くなっていました。
例えば物価の高いヨーロッパ先進国と、アフリカの僻地国などを比較すれば、より大変な勤務環境でありアフリカの僻地国の方が、勤務手当が何倍も支払われるといったことになります。ただ住居手当などは、やはり物価に応じた形で設定されていたと記憶していますので、結果的には物価、危険性、気候、生活環境の大変さなど、様々な要因を考慮して、手当が決まってくると思います。また現地での税制などにも注意が必要です。東南アジアなどでは、一般的に日本よりも所得水準が低いために、日本人の感覚からすればかなり少ない金額で、累進課税の最高税率のレンジに到達するといったことがありますし、外国人には現地人よりもより高い税率を課す国もあります。このような点も考慮した上で、手取額をベースに給与水準を設定していくことが必要だと思います。
ただ、いずれの場合も、日本での基本給を物価水準に応じて減額ということは、行き過ぎであると思います。
日本での基本給は維持した上で、これに上乗せする手当部分を、現地事情に応じて決定するということが、あるべき姿であると思います。
なお外務省出向時代になるほどと思ったのは、勤務地の環境が厳しい地域では、健康管理休暇といったものが認められており、数か月に一度先進国やリゾート地で休暇を取ることが認められており、また日本食の調達が難しい国では、近隣諸国まで日本食の調達をしに行くことが定期的に行われており、このような配慮は私企業であっても、望ましいことであると感じました。
私も外務省勤務時代に西アフリカ諸国などを訪れましたが、このような場所に長期間いると、精神的にも、肉体的にも非常に疲れます。環境が厳しい地域の大使館には医師が派遣されていますが、私も西アフリカの某国訪れた際に、大使館で点滴を打ってもらった経験がありますし、南米某国では、首都が2,500メートル程度の高地にあり、ここに長期滞在したら軽度の高山病の様な状態になり、手当を受けた経験もあります。西アフリカでは某建設会社の方に現地で話を聞いたところ、その会社では日本人駐在員が10人位おり、マラリアに感染した回数を競い合っているというような話も聞きました。
いずれにせよ、想像を絶するような過酷な環境も世界には多くあることは間違えありませんので、単に物価だけで判断することは誤りではないでしょうか。
現在日本人が多く勤務する国は、米国や西ヨーロッパ諸国よりも、アジアなどが多くなって来ております。今後はアフリカ勤務といった方も増加すると思います。大多数の国では、日本にいる時よりも、過酷な環境で勤務を行っているといっても過言ではないと思います。
駐在員の給与の適正額について、各企業の事情もあり、これが正解というものはありませんが、ご相談いただければ各国(各都市)での物価情報なども考慮しながら、皆様の状況に合わせてある程度妥当な給与スキームをご提示させていただけると思います。困った際には是非ご一報下さい。