皆様の会社が海外との取引を開始すると、次には外国人を海外から連れて来るという会社が多く見られます。その理由には、今後海外での事業を益々広めるために、英語等の外国語に堪能で、現地事情を良く知る人間を連れて来たい、日本において増加する外国人への対応のために連れて来たいというようなケースの一方、少子高齢化の影響で、日本国内における労働人口の減少が深刻な問題となり、人材不足を解消する手段の一つとして外国人労働者の採用を考えるケースがあるのではないでしょうか?
そこで今回は税務を離れ、入国管理法の規定をベースに、外国人の日本での就労について、書いてみたいと思います。
例えば「工場のライン作業でちょっと人が足りないけど、中国などから単価の安い人間を連れてきて、雇用出来ないか?」といった場合ですが、そんなに簡単ではありません。
まず外国人の中でどのような職種にも就ける方は、以下の2つに限定されています。
(1) 働き方に制限が無い方(日本人と同じ取扱い)
(2) 週28時間以内でアルバイトが認められている留学生の方
ここで働き方の制限が無い方とは永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者の方となります。ただし永住者の方以外には、滞在期間が最長5年となっており、永住者となるか、滞在期間の延長が認められない限りは、日本における滞在期間に制限があります。
また「定住者」とは、法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認める者であり、難民、日系三世、中国残留邦人などが該当します。
この方たちについては、基本的にどのような仕事も出来ますので(留学生の風俗産業従事は除く)、雇用側もどのような仕事を行わせても構いません。ただし最低賃金を順守する必要があることは言うまでもありません。
他方就業させることを目的に海外から外国人を連れて来るような場合においては、勝手が違います。
基本的に外国人の就労は
① 外交、公用、教授、芸術、宗教、報道といった活動
② 高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、技術・人文知識・国際業務、興業、技能といった、一定の経験、知識を前提とするような業務
③ 企業内転勤(業務については、技術・人文知識・国際業務活動)
④ 技能実習
についてのみ認められており、同一作業の反復により修得可能な作業(いわゆる単純作業)に就かせることは、一切認められておりません。
すなわち、「すぐ覚えられるような単純作業には、外国人を従事させることは出来ない。」というのが法の決まりです。
このうち皆様の企業で関係してくると思われるものは、通常
① 技術・人文知識・国際業務
② 企業内転勤
③ 技能
④ 技能実習
のいずれかに該当すると思われます。
ここで①~③の資格においては、大学でその分野に関して専門に学習するか、その分野の業務を10年程度以上行った技術を有する者などであり、工場でのライン業務などに就かせるケースは該当しません。特に「企業内転勤」については、海外子会社の従業員を日本の親会社に連れて来て、工場のライン作業に従事させられるだろうと思う方も多いのではないかと思いますが、企業内転勤で行える業務は①の技術・人文知識・国際業務という限定があります。
他方④の「技能実習生」という資格では、工場のライン作業に従事させることが可能です。ただこの制度の趣旨は日本で技術を学び、実習後に自国に戻りその技術を自国に根付かせるという国際貢献を建前にした制度であるため、単純作業に就かせることは出来ません。
(何か単縦作業に該当するのか?という定義は難しいですが、例えばパーツを箱から出してラインに並べるといった業務は、単純作業に該当するでしょう。)
また同制度には1号と2号があり、1年を超えて受け入れが可能な業種(第2号移行対象業種)は72職種131作業に限定されております。また2号移行対象業務でも、最長3年までの滞在しか許されておりません。(ただし建築は5年)。また1号の期間については、受入時における1ケ月~2か月間の座学研修(日本語、日本語文化等)義務がある他、毎月1回以上監理団体のチェックを受けるなどの義務があります。そのため第2号移行対象業種以外で技能実習生を受け入れる様なケースは、殆どないと思います。
その一方この制度を悪用し低賃金かつ、長時間劣悪な環境下において外国人労働者に仕事をさせるようなケースも多く、実習生の失踪事件などが数多く発生しています。例えば多くの実習生を狭い部屋に何人も住まわせ、高額の家賃を天引きするといった賃金面での問題点や、技能実習計画とはかけ離れた、汚れ仕事をさせるなどの業務面での問題点などがあります。そこで同制度については現在法改正が進められており、実習期間については5年まで認められる方向性ですが、その反面監理体制の強化により、悪徳な受入企業、監理団体の制度からの締め出しが行われていく予定です。
そうすると、今後「留学生のアルバイト枠を利用した就労」が、低賃金で人手不足を解消したい企業にとって、益々活用されるようになってくると思われます。
コンビニやレストランなどに行くと、外国人の店員さんが多く目につくようになりましたが、その殆どは、留学生のアルバイトではないかと思います。
入国管理法上は、留学生のアルバイトは「資格外活動」となっており、「就学を条件として認められるものであり」、学校に通わずにアルバイトだけを行うといったことは認められません。こちらにおいてもブローカーと学校が共謀し、制度の悪用が行われるような状況が目に余るようになれば、見直しが図られてくると思います。
いずれにせよ日本の労働人口が益々減少し、外国人の方にお手伝いただかなければいけない状況に来ています。そのためにもきちんとルールを理解したうえで、適切な外国人の雇用を行って行く必要があると思います。
なお原高明公認会計士・税理士事務所では、行政書士事務所も併設し、外国人の方々の雇用に関する相談や、外国人の雇用に関して必要となる書面の作成代行などを行っております。
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