先日までフィリピンで、お手伝する会社の決算作業を行っていましたが、いや~暑かったです。日中は37度位まで気温が上昇し、外を歩くとクラクラする様な状況でした。東南アジアの各国は、3月から5月が一番暑い時期であり、この時期の出張はかなりつらいですね。なお帰国後その足で北海道に行き、いきなり風邪をひいてしまいました。(雪がちらちら舞っていました。)
さて今回は、国家予算が少ない国ならではの脱税防止の知恵が、取引を行う上で、大きな影響を及ぼす例について、説明したいと思います。
同じ東南アジアでも、国により多少相違はあると思いますが、多くの国では公式領収書(Official Receipt)、公式請求書(Official Invoice)の発行が求められています。
日本ではなじみのない言葉ですので、公式って何?といった疑問を持たれると思います。
簡単に言えば、税務当局が公式と認めた領収書、請求書です。公式と認められるためには、領収書の発行前に、その記載内容、フォーマット、発行枚数、領収書、請求書の番号(連番管理のため)を税務署に届けて、印刷許可を貰い、更に税務署指定の印刷会社で印刷を行う必要があります。”うわ~面倒くさそう!!”と思われると思います。
税務当局では、各会社が発行する領収書、請求書の情報をすべて管理しており、また連番管理をさせていますので、税務調査の際には大きな威力を発揮します。書き損じについても、全て保管が求められ、請求書、領収書が全て誰に対して発行されたのか(または無効になったのか)が、分かるようになっています。
一方サービス・物を購入する側は公式領収書・請求書を必ず受領することが原則です。そうしないと、経費として認められません。銀行の振込み記録などから、払ったことが明白である経費についても、公式領収書(請求書)が無いということで、経費計上が認められないのです。ところが、サービス、物を購入する相手次第では、公式領収書、請求書を持っていない相手も当然います。個人の方は通常持っていませんし、小売店などでも持っていない場合があります。
さてこの公式領収書に関して良く問題になるのが、駐在員の住居の賃貸です。住居を貸す側は個人オーナーの方が多いために、通常公式領収書を発行してくれません。(また公式領収書を発行しなければいけないのであれば、貸せないと言われることが一般的です。)
更にフィリピンでは賃料の支払いを行う場合には、5%の源泉徴収が必要です。幅広い項目に対して適用される源泉徴収制度も、脱税防止の強力な武器ですよね。
しかし個人オーナーさん達は、源泉徴収も拒否します。理由は、源泉徴収した税額を税務署に収められれば、その20倍の家賃収入があることが、税務署に知られるからです。大体オーナーさんは、頭の良い方が多く、税務の事も良く分かっていますので、このような話になります。
公式領収書を発行することでも、反面調査などがあればその所得の存在が知られますが、源泉徴収制度により、調査など無しにその所得が補足されてしまいます。
もっとも賃借する企業側とすれば、公式領収書が無ければ費用計上出来ないばかりか、5%の源泉徴収漏れも指摘されるようなことは、避けることになります。そのため通常企業では、個人オーナーとの賃貸契約は出来ません。
フィリピンでは少しでも税収を増やそうとして、いろいろな手段を講じていますが、そのことにより、企業が取引を行えなくなるといったことが生ずるとなると、本末転倒ですよね。
お金持のオーナーの方には、是非公式領収書を発行し、きちんとした納税意識を持って欲しいものです。
ちなみにオーナーは弁護士や、医者などが多いのですが??
それでは通常どのように社宅を借りているの?という点については、次回以降で説明したいと思います。