〜租税回避の意図は無いのに、課税された!
昨日消費税率10%への引き上げ時期は、当初の予定から1年半先送りして2017年10月とすることが決まりました。野党はアベノミクスの失敗がこれで明らかになったと騒ぎ立てておりますが、皆様の実感はどうでしょうか。私としても本格的に景気が回復したというには、ほど遠い様な気がします。
アベノミクスの成否については専門化の方に任せるとしても、多くの方が景気回復を実感出来る状況にはないと思います。
さて先号において、タックス・ヘイブン税制については、たとえ御社の海外子会社の所得に対する税率が、著しく低い状況にあった場合でも、会社がペーパーカンパニーなどではなく、きちんと業務を行っていれば課税対象とはならないと書きました。それでは「きちんと業務を行っている」というのは、どのような場合なのでしょうか。
原則は、「その場所、地域に会社が存在する意義がきちんとあり、事業を行うための施設、人をきちんと有しており、かつ親会社から独立して運営が行われている。」
という様に捉えることが出来ます。税法上の言葉で言えば「適用除外要件」を満たしているということ状況を言います。
ここでタックス・ヘイブン税制の適用対象になる会社について、一度きちんとおさらいをしておきたいと思います。
この税制は
① 外国法人のうち、居住者及び内国法人によって50%超の持分を直接又は間接に所有されているもので、
② その本店所在地における所得に対する税負担が、わが国における税負担に対して著しく低いものが(特定外国子会社等)、
③ 所得に相当する金額を有する場合には、
④ その特定外国子会社等の10%以上の持分を直接又は間接に有する内国法人(納税義務者)の各事業年度の所得計算上、
⑤ 特定外国子会社等の適用対象金額のうち、持分割合に対応する部分の金額(課税対象金額)を、その内国法人の収益の額とみなして、益金の額に算入する
という制度です。
簡単に言えば、日本の法人・居住者が50%を超える株式を保有する海外に本店のある会社が、その会社がある国において(1)法人所得税が存在しない場合、又は(2)租税負担割合が20%以下の場合には、この会社は特定外国子会社等(タックス・ヘイブン税制の適用対象となりうる会社)となり、この会社の株式を10%以上保有する日本法人(個人)は、この特定外国子会社等の所得金額に、自分が持っている株式の比率を乗じた金額を、法人税(所得税)の計算をする際に、収入額として計上しなければいけないというものです。
「何で海外の子会社の利益についても日本で課税されなければいけないんだ」と思われる方も多いと思いますが、これは海外の低税率国を利用した税金逃れに歯止めをかけるためのシステムです。
そのため税金逃れでは無く、そのような低税率の国、地域に会社が存在するきちんとした理由があれば、この税制の適用は行わないということになっています。
それでは税金逃れでは無いことは、どうやって示せば宜しいのでしょうか。
そのためには、先の述べた「適用除外要件」を満たす必要があります。
ただし、以下の業種に従事する会社については、この適用除外条件がありません。
それは株式・債権の保有、工業所有権等の提供、船舶・航空機の貸付等を事業とする会社です。そもそもこれらの事業はその性質上、わが国でも十分行えるものであり、わざわざ低税率国に存在する理由が、税負担の軽減しか考えられないというのがその理由です。ただし株式の保有を事業とする持株会社であっても地域統括本部のように、株を所有する子会社等の事業を管理し、経営上の指示を与えるなどの業務を行っているのであれば、事業持株会社については例外とされています。
これら以外の業種について、どのような場合に「適用除外要件」を満たすのかについては、次回説明を行いたいと思います。
なお、コラムについては発行する前に内容が難しすぎないかといったチェックを受けて発行しておりますが、難しいので読まないといった声も聞こえて参ります。
発行頻度は毎週から2週間に1回に減らしておりますが、内容に関しても「もっと簡単にしてほしい」などご意見がございましたら、御寄せいただけますようお願いいたします。