~技能実習にかける意気込み~
6月後半にフィリピンのセブに行って参りました。フィリピンには年に何度も行っておりますが、そのうちセブに行くのは年に1~2回程度です。
セブにはここ5年ほど現地のNGOを通じて就学支援をしている子供達がいる他、最近ですがSeven Spiritという、現地の貧困家庭の子供や、ストリートチルドレンに対し音楽教育を施し、成功体験を身に着けさせることにより自信を持たせるといった素晴らしい活動を行っているNGOの方々とも親交が出来ましたので、今後は訪問する機会も増えてくると思います。
さて、今回セブを訪問したのは、このようなNGO活動を行う団体や、就学支援を行っている子供達と会う以外にも目的がありました。
最近別途取組を初めております技能実習生(海外から日本に対して技能を習得しにくる方々を企業が受け入れ、最長3年(建築は5年))の技術指導を通じて技術を習得し、母国の発展のために貢献するための受入事業)を行う上で、事前に日本語、日本文化を母国で学んでもらうためにお付き合いをさせていただく予定の日本語学校を見学して来ました。
技能実習制度については、”実質的には発展途上国より安い労働者を連れて来て、日本人の働き手がいないような職場の人の穴埋めをするための制度“などの指摘もありますが、この制度を正しく利用すれば、受入を行う企業及び日本で技術を学ぶ双方にとり大きなメリットがある制度であると思います。
ただし、受入側にとっては言葉や文化、生活習慣の事成る外国人を受け入れるということは、相当の負担を感じられると思いますので、事前の日本語学習、文化、職場環境などの学習の重要性は、言うまでもありません。
技能実習生の受入れに対する心理的なハードルを少しでも下げていただくためにも、事前教育を十分に実施した上で技能実習生を来日させることが、この制度の成功のための大きな鍵であると思います。
さて、今回見学させていただいた学校ですが、見学当日学校に到着するとまず生徒さん達が学校の前の道を清掃しており、皆が「お早うございます。」と声を掛けてきます。また学校の中に入るとここでも、全員が「いらっしゃいませ。よろしくお願いします。」と声を掛けてくれました。この学校ではいくつか驚いたことがありました。
1) 入校1か月目は立って事業を受ける。
日本で技能実習を受ける際に、どのような職場に配属されるか分かりません。当然立ち仕事もあるため、まず授業の時間(1日12時間もありますが)程度立っていられないようでは体力的に不適格ということで、退校させられます。
2) 出来るまで授業は終わらない。
毎日授業の終わりに、習熟度テストがあり、合格するまで帰れないそうです。そのため授業終了が深夜になることも度々あるそうです。
3) 男子は丸刈り
日本の野球部以外でもあるのだ!!と驚きました。
4) 授業中のあくびは腕立て50回
授業は深夜に及ぶこともあり、特に日本に行く日程が近づくと校長先生の日本文化等の教育が始まります。その際、明け方の5時、6時まで10時間以上の授業が続くこともあるそうです。ただ、その際生徒があくびをしたら、教室から出ていくか、男子は腕立て50回、女子は20回を課すとのことです。
教える側も真剣勝負で教えているのだから、教わる側も真剣になればあくびなで出ることは無い。というのが校長先生のお考えの様です。なお校長先生はフィリピン人の女性ですが、日本で15年程勤務したことがあるということで、流暢な日本語を話され、日本の職場環境などにも精通しておられました。
この様に相当なスパルタ教育がビザの取得が出来るまで、4か月以上続くそうです。確かにこの位、事前に勉強をして来れば、日本に来ても問題は少ないだろうとの印象を強くして帰って参りました。
また、この学校では、夜遅くまで授業を行っているので、日本にいる元生徒が実習中に抱える悩みや、問題について、帰宅後に連絡すれば、いつでも先生方が親身になって話を聞いてあげることが出来る体制も整えているということでした。先生の多くが、自分が日本で技能実習の経験を積んだ方達であり、日本語のレベルは玉石混合ですが、日本において自分たちが経験したフィルターを通じて的確なアドバイスを行っているため、”技能実習制度が逃亡する“ といった問題も、殆ど発生しないとのことでした。
私の会計事務所では、企業の国際化の支援をモットーとしておりますが、技能実習を通じて日本企業と関係が出来た方々が、次に日本企業が海外展開を図る際において、大きな戦力になってくれると考えております。
日本では少子高齢化により労働人口が減少するとともに、市場規模も確実に縮小していくことに間違えはありません。そのような中、日本語と技能の両方を習得した元実習生が、日本企業の海外展開において、大きな助けとなってくれるのではないでしょうか。
そのような意味で、技能実習生が「小さな外交官」として、日本と海外の橋渡しをする人材として活躍することを願って止みません。