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03日 8月 2016

第20回 従業員の着服に関する税務上の取り扱いについて

~横領金額相当の収益計上について、重加算税もありうる~

 

 先日、日本国内で某税法セミナーに参加した時ですが、役員・従業員の着服により被った被害相当額の税務上の処理に関する税務当局の判断および、その判断を不服として裁判に訴えた場合の裁判所の判断というテーマで話がありました。

 

 日本ではあまり多くはないかもしれませんが、現金商売を行う飲食店などでは、『レジの担当がごまかしていたことが発覚した』などという話は結構ある様です。

 

 特に従業員の給与が安い国では、やはりこの手の話は多いのが現状です。人間弱いもので、「会社に沢山のお金があるのに比較して、自分の給与はこれっぽっち」と思うと、ついつい間が刺してしまうということもあるでしょう。

 

 以前お伺いしていた会社では、経理担当者の着服が発覚したのですが、その際には「着服はしていません。帳簿には従業員貸付金として記帳してあります。そのうち返すつもりでした。」というような言い訳をしていたのを思い出します。

 

 この会社が従業員向けの貸付を認めていたのかどうかは記憶していませんが、経理担当者が上司の承認も得ずに、自分に対して貸し付けを行うなどという制度が存在する会社はあり得ません。担当者の言い訳に驚くと同時に、感心してしまいました。

 

 なお、この経理担当者は当然クビになりましたが、後日別の会社の経理人員の面接に立ち会った際に、偶然にもこの経理担当者が面接を受けに来ており、ビックリしたのを覚えています。(もちろん不採用にしてもらいましたが。)

 

 さて本題です。日本でも、その他海外においても従業員の横領に関しては被害金額を損金に計上することは問題なく求められています。他方横領した従業員から返済を求めることを前提として収益を計上することも要求されています。結局取られたら取られっぱなしでは無く、当然返してもらうことを想定した処理を行う必要があります。ただ収益の計上に関しては、大きく分けて3つの方法があり、

 

①横領があった事業年度に収益計上

②横領が発覚した時期の収益に計上

③弁済された時の収益計上

 

があります。

 

 以下の判例は日本の例ですが、税務当局及び裁判所はかなり厳しい判断をしています。

 

 例えば東京高裁平成21年2月28日判決では、①の横領があった時点の収益計上を求めており、更にこれを計上しなかったことに対して、重加算税を課すことを認めました。この背景には、

 

① 正当の注意を払えば不正が容易に発覚するような状況にあるのに、きちんとチェックをしなかった。② 本人の弁済能力について無いものとは言えない。

 

という理由に基づくものです。

 

 すなわち、発覚しないように精巧に仕組まれた横領であり、なおかつ横領した本人の弁済能力が全くないといった状況でなければ、本来直ぐに気が付き、弁済させることが出来たはずだという判断に基づく判決となっています。

 

 この事件に関しては地裁での第一審では、横領が発覚し、従業員をクビにし、損害賠償請求を起こした年度(すなわち横領が発覚した年度)での収益計上で足りるとしていたのですが、これに対し税務当局が上告し、その結果として通常の注意を払えば気が付く程度の横領であり、横領年度に収益計上を行う必要があるということで、過去数年に遡り過少申告を修正させられ、更に重加算税も課せられることになりました。

 

皆様はこの結果をどう受け止めるでしょうか。

 

 税務署の判断については、各国のお国事情もありますので一概に言えませんが、重要なことは出来る限り従業員に不正を起こさせないための仕組みをきちんと作り、それを有効に機能させることであると思います。

 

 不正を起こさせないための仕組み作りについては、ここでは取り扱いませんが、

内部統制(Internal Control)という言葉は聞いたことがあると思います。内部統制の仕組み作りはいろいろとノウハウがありますので、ご興味がある方はご一報下さい。

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原高明公認会計士・税理士事務所

 

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