~日本と海外の税率の差に着目してみてはいかがですか~
まずは皆様が海外に製造子会社を持つ日本の親会社の経営者であると想像してみて下さい。同子会社は親会社向けの製品の製造を行っています。
幸い両社との経営は順調にいっており、毎期継続的に利益も出ており、現金残高も着実の増えている状況です。
ここで皆様は考えます。
〝当初海外に子会社を出したのは、日本の本社の事業を支えるためであり、別に利益はトントンでやっていけば良いのではなかったか?子会社でこんなに利益だしてもしょうがないし、もっと親会社に利益が残る様に、少し調達単価を下げようか“
このように考えた方。本当にそれで良いのでしょうか?
「あ~そうだった。確か移転価格税制とかいうものがあり、親子会社間の取引でも、第三者間の取引価格と同様でないと、税務当局には、適正価格に修正させられるとかどうとか??」
確かに日本の親会社が沢山儲かるような価格にすると、子会社のある国では逆に利益が少なくなるので、やり過ぎはダメだった。という話ではありません。
確かに以前のメルマガで記載しましたように、国際間の取引において、関係会社間で行われる取引については、その取引価格が、関係が無い第三者と行う場合の価格(独立企業間価格)と同程度であるように、税法は求めています。
ただ今回はこのような移転価格税制の考え方は横において置いて、日本の親会社で利益を大きく出し、海外子会社側では利益が出ない様にすること自体が良いのかどうか考えてみたいと思います。
やっぱり日本でお金残すには、日本の会社が儲けないと とお考えの方、海外子会社から配当を受け取るという方法も考えられますよね。
現在日本の税法では、海外子会社からの配当に対しては、配当額の5%だけが課税対象となります。「え~そうなの。海外からの配当は100%課税じゃ無かった?」という方いらっしゃいませんか?
海外に出ていった投資資金を日本に還流させるために、海外からの配当についても非課税にするといった話を聞いたことありませんか。
「でも外国では配当を出すときに源泉徴収あるでしょ?結局あまり変わらないんじゃないの」
という方もいらっしゃると思います。ただ日本と租税条約を締結する多くの国においては、租税条約の適用により源泉税率は10%程度まで抑えられています。
(ただし配当に関するこの外国での源泉徴収分については、日本での法人税等の申告時において、納税額から控除することは出来ません。)
いずれにせよ、計算してみませんか?その時重要なのは、日本の税率と、子会社がある国の税率の差です。日本でも法人税はかなり下がってきましたが、それでも法人税、事業税、法人住民税などの税負担を考えれば、課税所得の30%程度は税金として納める必要があります。
一方、国によりますが、日本が子会社を多く作る中国や、東南アジア諸国などでは、日本よりも税率が低い国が多く、また外国投資に対する優遇税制などがあり、法人税が無税といった場合もあります。私がおりましたフィリピンでも、多くの企業が事業開始後4年間~8年間の法人税免除などの措置を享受しておりました。
それでは、以下の例で実際に計算してみませんか? グループで1億円の利益の残すのに、日本で残すのか良いのか?それとも海外で残し、これを日本に配当してくる方が良いのか,比較してみたいと思います。
1) 日本親会社で利益を1億円計上する。海外子会社ではブレークイーブンとする。
2) 日本ではブレークイーブン、海外子会社で1億円の利益を計上する。
利益に対する税負担は、日本は30%、海外子会社所在国は0%とします。
また子会社が配当を行う場合の源泉税率は10%とします。
ケース1では、日本法人の利益1億円に対し、3,000万円が課税されますので、差し引き7,000万円が利益として残ります。
一方、ケース2では、海外子会社の利益1億円が非課税ですので、1億円そのままが利益として残ります。そのままであればグループで3,000万円多く儲かりました。
ただこれを日本の親会社に配当するとします。その場合以下の税金がかかります。
① 海外子会社所在地国では、1億円×10%の1,000万円が源泉徴収されます。
② 日本では、1億円の5%の500万円が課税所得となりますので、500万円×30%
の150万円が法人税等の負担額となります。
そうすると1億円から1,150万円を差し引いた8,850万円が残ることになります。
ケース1に比べ、実に1,850万円も多くの利益が会社に残りますね。
上記の例は海外子会社所在地国の税率が0%と極端な例になりますが、簡単な計算をするだけでも、日本の親会社にお金を残すより、海外子会社で儲け、配当させたほうが良いケースが多々あることがお分かりいただけると思います。
日本ではさっぱり儲けず、海外子会社では利益が結構出ているといった企業で、日本本社が多額のキャッシュを毎年増加させているといった例も多くあります。
販売機能、本社機能だけ日本に残し、日本では従業員数も最小限に抑え、生産はすべて優遇措置を受けて海外で行っている といった会社などが、典型的な例です。
ある程度利益は出るが税負担が重くて大変だ。また今後は少子化が益々進み、従業員の確保も難しいし、この先分からないという皆様。是非一度、海外展開を検討されてはいかがでしょうか。思ったより簡単かもしれませんよ。