~「介護人材争奪戦にいよいよ日本も参画か。見えて来た課題とその解決策は?」~
先日フィリピンのドゥテルテ新大統領が訪日をされ、ニュースや新聞でも大きな話題となりました。同大統領については米国大統領に対する暴言や、麻薬蜜売人や使用者に対する超法規的な殺人、南シナ海をめぐる中国との駆け引きなど話題に事欠きませんが、フィリピン国内では非常に高い支持率を保っており、国民の期待は非常に大きなものがあります。海外からは批判的な眼差しが多く注がれていますが、国民からは「非常に勇気があり、言ったことは必ず実施する」大統領として、フィリピンを大きく変えてくれるとの期待が持たれています。私もフィリピンと関わってから約20年が経過しましたが、いままで国民の間には、漠然とした閉塞感が漂っていた気がします。「貧困問題」、「汚職問題」、「麻薬問題」など数多くの課題が放置されたままになっており、トップが変わっても「どうせ変わらない」という諦めの境地にいた国民が大半を占めていた様な気がします。しかし今回は「何かが変わる」という期待が非常に大きな様な気がします。海外では報道されませんが、「政府機関での手続時間が大幅に改善された」とか「空港に乗り入れる通常料金のタクシーが大幅に増加した」など、就任数か月でいろいろなことが動きだしています。
さてフィリピンは「看護師」、「介護福祉士」の供給大国であることをご存知でしょうか?メイド、家政婦についてはご存知かもしれませんが、実は医療福祉の分野でも多くの人材が海外で働いています。
先日に大統領の訪日時には話題には出なかったようですが、先日衆議院において「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」及び「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」が可決されました。この法案は間もなく正式に認められると思いますが、今後日本の介護福祉士試験に合格すれば、外国人に対して「介護」での就労の門戸が開放されることになります。
あまり知られていませんが「介護福祉士」、「自動車整備工」、「美容師」などの分野では、外国人が日本の国家試験に合格しても、仕事には付けません。今回「介護」については、その対象からはずれることになり、試験に合格すれば外国人でも就労が可能となります。
更にはこの二法案の可決におり技能実習生の分野で「介護」が認められる下地が整い、ここ数か月から1年位の間には、「介護技能実習生」も認められることになると思われます。
日本では2020年までに約38万人の介護人材が不足すると言われています。外国人の介護分野への流入に関しては、言葉の問題や、介護の質の問題などを理由に反対する声多くあることも事実ですが、それでは今後介護不足の問題をどのように解決していけば良いのか、有効な代替手段はなかなか無いと思います。
私共では日本の企業、皆様が海外の力を借りながら、双方に取って利益のある取り組みが行われることを目指して仕事をしています。今後フィリピンの看護系学校などを訪問し、日本で介護士として働くことを希望する人材の発掘なども行っていかねばなりません。また日本語習得のための教育プログラムなどもきちんと整えていく必要があります。
現在世界各国でフィリピン、インドネシア、ベトナムなどの介護人材を取り合う形になる日が直ぐそこまでに迫っていると思います。
日本でも漸く法整備がなされ、この問題に対処する素地が整うことになりそうですが、法制度の整備のみならず、日本人職員との共存のための施策や、標準語のみならず方言教育の充実など、まだまだ課題は多いと思います。更に日本では介護関係に従事する方の所得水準が低く抑えられているといった問題もあります。折角苦労して日本語を覚えたとしても、欧米より給与はかなり安いとなれば、余程日本に対して親近感を持っている方でなければ、わざわざ苦労して日本に来たいとは思わないでしょう。
ただ幸いな事に、先の3か国などでは日本は素晴らしい国で、日本人は勤勉で親切な国民と思われています。日本が憧れの場所であるように、我々日本人ひとりひとりが、世界に尊敬されるような行いを心掛けていけば、憧れの国日本に来たいと思うような方々は必ず見つけられると思います。
立ち止まっている訳にはいきません。皆様にも是非この「介護」問題に対する解決策について、提言をいただければと思います。