~全世界の税務当局が、手を取り合って~
私が中学生の頃、その当時人気絶頂であったイギリスのロックグループのQUEENに”手を取り合って“という曲がありました。現在50代位でロックミュージックが好きだった方は、知っている方も多いのでは無いでしょうか。
生まれて初めて見た外国人アーチストのコンサートがQUEENであり、その当時札幌に住んでいましたが、自宅から10分位の場所にあった会場(札幌オリンピックの際のフィギュアスケート会場)に、部活の帰りにジャージ姿で見に行ったのを覚えています。
その歌詞の中で、手を取り合うのは”愛する人“とでしたが、現在世界中の税務当局が手を取り合う時代になりました。もともと税務当局間の情報交換は行われていましたが、最近特に情報の交換が活発に行われるようになってきております。
今回はそのような税務当局の連携メニューの中から、富裕層を最も恐れさせているという「非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の導入」について、簡単に説明してみたいと思います。(詳しく知りたい方は、国税庁のHPをご覧いただければ、いろいろな情報が出ております。)
この制度を日本側から見れば、日本に居住していない人や、外国法人等が、日本国内で銀行口座等を持っている場合に、銀行から税務当局に対してその情報を提供させ、その口座を有する個人、法人の居住国(所在国)の税務当局に対して、口座の残高や、口座への入出金の状況などの情報を報告します。 それと引き換えに、海外の税務当局より、日本居住者が外国で保有している口座情報、日本法人等の海外口座の情報を入手することになります。
そうすると何が起きるのでしょうか?
まず海外の銀行等に隠した資産の存在や、海外の口座に流れ込む資金の存在が明らかになります。5,000万円を超える財産を国外に有する方には、その内容を報告させる制度がありますが、正直に答える方ばかりとは限りません。そこでこのような情報交換を通じて、海外での所得や、財産を明らかにさせることにより、海外の金融機関にため込んだ資金額や、その流れを丸裸にしてしまうことで、海外での収入なども明らかになってきます。そうすると海外の口座を利用した脱税行為などが、非常に難しくなります。
また日本に駐在する外国人などが、本国で貰っている給与などについて明らかになります。原則日本での労働の対価として得た給与については、どこで受け取ろうと日本の所得税の課税対象となります。例えばドイツの本社から日本に派遣された駐在員が、ドイツの本社より自国にある口座に振り込まれているような給与があれば、それについても日本での課税対象となります。この所得について今まで日本では分からなかったものが、
今後情報交換を通じて入手出来れば、確定申告を通じてきちんと申告を行ってない場合には、脱税の事実を把握することが出来ます。
今まで“海外で受け取っている収入はばれないから、申告もしない”と考えていた方にとっては、死にたい位大きなインパクトがあるでしょう。
また自らが海外に駐在していた経験から非常に気になるのが、海外に駐在している日本人が、日本の出向元企業より支払われ、日本の口座に振り込まれている給与などの情報です。
海外駐在される日本人の方(1年以上の期間で出国される方)については、日本の出向元で支払われる給与について、役員などを除き日本では課税されません。しかしこの給与は、出向先の国で課税されます。(所得の源泉地で課税。源泉地とは、その所得が生み出される場所であり、給与については、その収入を得るための労務提供行為が行われた場所と考えられます。)
ただその様な場合、納税技術的に出向先の企業では源泉徴収は出来ません。そのため納税は自分で確定申告を行う必要があります。ただ現地での確定申告の方法などが分からず、会社も指導してくれないといったケースでは、確定申告をしていない方もいらっしゃると思います。
そうすると今後現地の税務当局から、"日本で貰っている分の申告もきちんとして下さい。“という通知が来る可能性が大いにあると思います。その場合には無申告、期限後申告などによりかなりの罰金、金利なども発生して来ます。
いずれにせよ、きちんと納税ルールを理解し、これを守ることが大切です。
税務当局にとって他国の税務当局は、税金の配分を巡って争う間柄ではありますが、徐々に情報を提供し合う”愛する人“へと変わりつつある様です。